原材料費の高騰で 生コン県内一斉値上げ

静岡県内の生コンクリート生産業者でつくる8協同組合が4月、一斉に値上げすることが日本経済新聞の調べでわかった。
原材料費の高騰が主な要因で、いずれも値上げ幅は過去最大規模となる。
建設業者のコスト増につながり、大規模な再開発や公共工事への影響は避けられない見通しだ。

生コンは石灰石などを原料にするセメントに砂や砂利、水を加えて練り合わせて作る。
工場から車両で建設現場に運搬し、建築物やインフラなどの資材にする。

各協同組合に実施したアンケート調査では、値上げ幅は組合によって異なり1立方銘あたり1000~2000円となる見通しだ。

県東部生コンクリート販売協同組合(沼津市)は現在の1万5700円の価格を4月から1万7700円に引き上げる。
「原料となるセメントの価格が、製造過程の燃料費の高騰などで1tあたり2000円以上上がり、砂や砂利も4月から1沙400~500円上がる」(組合営業部)ことなどを理由に挙げた。

県西部生コンクリート協同組合(浜松市)もセメント会社からの値上げ要請などを理由に1立方mあたり1万2000円を輸送地域により2000円以上上げる方針だ。
担当者は「値上げを実施しないとコスト増で工場の経営が難しくなる。閉鎖に追い込まれれば固まる前に建設現場に短時間で納入する生コンの供給に支障が出かねない」と指摘する。

1700円の値上げを計画する県富士生コンクリート協同組合(富士市)も「価格維持のため11工場を5工場に集約したが、これ以上は不可能」と危惧する。

一般的なマンションなどの建設工事で生コンが全体の費用に占める割合は1割程度とされる。
道路や砂防ダムといった大規模な公共工事になれば、生コンを購入する建設業者の負担はさらに増える見通し。
インフラの建設だけでなく、まとまった地域の再開発にも影響が出る可能性がある。

アンケートでは値上げの影響が大きい公共工事を巡り、自治体が発注予定価格の基にする積算価格に生コンの値上げの影響を反映するよう求める声が目立った。

県志太榛原生コンクリート協同組合(藤枝市)は「値上げが反映されなければゼネコンの負担が増え、生コンの使用量が多い公共工事の入札が不調になる」としている。
県内では土石流災害に備えた砂防ダムなどの建設を検討する自治体が増え、防災事業にも影響が出かねないと指摘する。

静岡県の公共工事を担当する技術調査課は「住民の生活に関わる公共エ事の入札不調は避けたい。
発注後に建設資材の値上げ分を受注業者への支払いに上乗せする『スライド条項』の適用を含め、生コンの実勢価格も調査し適切に判断する」方針。
ただスライド条項は工事を受注する建設業者の申請が必要で、入札段階で建設資材の価格上昇が反映されなければ、利益を見込めず業者が手を引く可能性もある。

また、公共工事の発注価格の基準にする県の建設資材の実勢価格の調査は、4、10月の年2回になる。
4月公表の調査には今回の生コン価格の値げは反映されないため「2022年度の上半期に発注される工事の積算価格の改定は難しいのではないか」(組合関係者)との不安も聞かれる。
今後、自治体や建設業者の対応が焦点になりそうだ。

2022年3月15日 日本経済新聞より